スキースノーボード用フッ素不使用のワックスを作る日本製メーカー TEMA RESCUE WAX

レスキューワックスの歩み


 最初に

 

 2003年、ハチ北アルペンレース会場にて、某ワックスメーカーの関係者が派遣されて来ていた時、私はその方に、スタートワックスが出て来て確かにトップスピードに乗るのは早いが、滑走性の持続が無いので練習で使用できない、もっと持続性のあるものを作って欲しいと話しました。

 すると、帰って来た答えは冷笑しながら、「そんなものは不可能だ!」 でした。

 

日効果が持続する生塗りパウダーの開発

 

 既存のメーカーが作れないなら自分で作るしかないと思い、早速研究に入りました。

 2004年、年頭頃、一応満足出来るワックスが仕上がり、当初自分だけで使用するつもりでしたが、ここまで良いものならビジネスになると考え、年末からワックス製造販売を始めたのです。

 

ポリエチレンコーティングの開発 

 

 ホットワックスに関して、最初の目標を、−20℃での優れた滑走性の実現と、春先の黄砂での滑走性を改善すると決めました。

 −20℃では、生塗りワックスではなく、ホットワクシングが重要と考え、先ずホットワックスの開発を始めましたが、当時主流であったパラフィンをアイロン施工する方法に疑問を持っていましたので、パラフィンを相手にせず、ポリエチレンを主成分とする方式を採用致しました。

 最初に決めた目標は、雪質及び雪温でホットワックスを分けない。」 です。

 何故ならば、ホットワックスを雪質や雪温で別けると、ゲレンデで外れた、時ユーザーには対応の方法がありません。

 更に、メーカーとしての責務から、なるべく種類の少ないホットワックスを出すべきだと思っておりましたので、この目標を掲げました。

 次に、

 

「何度もアイロンでワクシングし、ホットワックス浸透の廃止。」

 

 

 

 板は異なる部材を重ねて出来ています。

 

 当然アイロンで暖めると、膨張係数が異なる素材の接着面には悪影響があります。

 

 ですから、メーカー責任において、アイロン使用頻度を可能な限り引き下げる事に致しました。

 

 故に、従来のホットワクシングではなく、新概念の、ホットコーティング。」 

 

 を模索し、ワックスは1種輪だけ、1回の施工で200キロ効果が持続するものを作る事に成功し、更に改良を重ね現在に至ったおります。

 

 

 

 この研究は、3年程の試行錯誤の後、現在の無双の原型モデルの開発に成功、以来現在までパラフィンのホットワクシングとは無縁の世界を歩んでおります。

 

 

 

「雪虎」開発と、二硫化タングステンの廃止 

 

 

 黄砂対策で最初に作った生塗りワックスを、雪虎、と名付け現在に至りますが、最初は、二硫化タングステンにフッ素を配合し、ペースト状に加工したものからのスタートでした。

 

 このワックスは2006年の春開発し、4月から5月にかけて北海道で集中テストと改良を繰り返し、それなりの効果を得る事ができたのですが、2年後の2008年までの間、二硫化タングステンが人体に付着した場合、極めて落ち難く、衣服への付着の際洗濯が困難である事でお客様からの苦情をしばしば頂きました。

 

 加えて、手の指先等に付着した場合、目を擦ると角膜や水晶体を傷つける危険性のご指摘も頂きましたし、スキー場で使用すると、ゲレンデを汚染し植物が根から吸収して濃縮が起こり、その植物を牛等が食べると更なる生体濃縮が起こり得ます。

 

 その牛を人が食べた場合の悪影響を考慮すると、この素材をスノーワックスに使用する事は極めて危険であるとの結論に達し、二硫化タングステンの廃止を決め、その後の研究でより安全な素材で更に滑走性に優れるものを見つける事に成功致しました。

 

 以来、人体に有害である二硫化タングステン使用を止めました。

 

 

 

フッ素の全面廃止

 

 

 2012年、シリコンバレーに努める友人から、近い将来フッ素の毒性が問題になり、スノーワックスにもフッ素規制がかかる可能性が大きいとの情報を得ました。

 

 当時、私共はフッ素主原料のパウダーワックスで特許を得、さあこれからという所でしたので、受けたショックは相当なものでした。

 

 然し、タングステンを思い切って廃止したように、今度はフッ素の廃止を決断、2年間の研究開発でフッ素使用を止める事が出来ました。

 

 当然、雪虎からもフッ素を無くしましたので、最初の二硫化タングステンとフッ素が主原料であった雪虎は全く異なるワックスとなり、お陰で性能も桁違いにアップさせる事が出来て喜んでおります。

 

 言うまでも無く、フッ素ですら有害とされる現在の環境への関心の高まる中、フッ素以上に危険な可能性がある二硫化タングステンは、フッ素共々廃止して良かったと安心の思いです。

 

 

 

2液式の開発と販売の見合わせ

 

 

 

 少し時間が戻りますが、私共はホットワクシングでパラフィンは相手にせず、最初からポリエチレンを採用致しましが、並行して2液式のワックスを作りました。

 

 アイロンの使用からのユーザーの開放を目指していましたので、アメリカで当時開発された、落書き防止の液体ワックスに興味を持ったのでした。

 

 その方面にも友人がおり、その方を頼って取り寄せ、ワンシーズンの実験を致しました。

 

 結論としては、スノーワックスとして使うにはクリアーすべき問題が多く、将来他所からポリエチレンホットワックスが出てきたとき、2液式に切り替えてしまう心算でしたので、ジックリと研究開発を続け、5年ほど前に満足できるものを開発致しました。

 

 所が2018年にワックスベースを作りましたので、結局2液式はお蔵入りしたままになっております。

 

 更には、2液式はホットワックスとしての効果の持続が、私共のスーパー無双と比較すると、極めて短く、数日で効果を失います。

 

 ですので、ワックスベースとスーパー無双の性能には太刀打ち出来ません。

 

 私共は既に2液式には見切りを付けてしまい、採用予定はございませんが、完成した技術としての保持は致しております。

 

 

 

エッジワックス「侍」の開発

 

 

 

 2液式のテスト中、板を傾けた時に加速感がありました。

 

 調べてみたと事、私共の2液式は、滑走面全体をカバーするタイプで、エッジにも効果がある事が分かりました。

 

 2液式には見切りを付けましたが、テスト時のエッジの加速感は捨て得難く、2006年、エッジワックスの開発に切り替えました。

 

 それが、現在の「侍」の原型となっております。

 

 

 

年 表

 

 2003年

 

 スタートワックスの効果を持続させる研究を始め、2004年初頭に一応の完成を見る。

 

 2004年

 

 「レスキューイチバン」販売開始

 

 2005年

 

本拠地を現在の白馬村の住所に移し、研究開発とテストと発時間を大幅に短縮し、製品開発をスムースにする。

 

 2006年

 

最初のポリエチレンコーティング開発に成功し、「イロハ」のネーミングで商品化する。

 

 春の悪雪対策として2硫化タングステンとフッ素パウダーを主成分として、「雪虎」の販売を開始、並行して2液式を完成させる。

 

 2008年

 

環境汚染とユーザーの健康を考慮し、二硫化タングステンの使用を止める。

 

 2014年

 

フッ素を全廃する。

  2018年

国産にてホットワックス不要の滑走面開発をスタート 開発結果は良好な結果が得られる

 2019年

フッ素レススタート&レーシングワックスRESCUE ZERO 発売開始
ノンパラフィンポリエチレンホットワックス スーパー無双 発売開始
ワックスベーススキー販売開始

 2021年9月5日 

黒固形から石油系パラフィンを廃止をもって全商品からパラフィン撤廃完了
RESCUE ZEROver1.2 発売開始
黒固形ver2.0発売開始